extra II
INTERVIEW


HATE ALL (2005)

'80年代半ばにノイズ・ユニットとして活動を開始し、'90年代に入ってからはバンド
形態になりマイペースながら着実に活動を続けるバクテリア。特にこの数年で、凶暴
で強靱なサウンドの進化にさらに加速がかかったようだ。歪みまくったサウンドの中
にバンド・アンサンブルのダイナミズムや高度に構築された楽曲が生み出すカタルシ
スが垣間見える。そして、“ノイズの到達点”のそのさらに先へと向かおうとする彼
らに話を訊いた。

―――今回は6曲入りのミニ・アルバムという形ですね。

カワグチ:本当はシングル扱いにしようかなと思って、次にフル・アルバムを作ろう
と考えてたんですけど、内容的にはアルバムに近いぐらいの感じですね。

デン:あとは過渡期にあるところがあって、今ライヴでまさにやってる感じと前のア
ルバム「SCUM」ってのは、だいぶ雰囲気がかけ離れてて。その掛け橋というか。

―――その変化とは?

カワグチ:新しいやり方でも表現できるようになってきたってことですね。今までは
ノイズ一辺倒というか、楽曲の中にあるノイズの部分をフィーチャーした音作りを極
端に出してたんですけど、もうちょっと違うやり方で自分たちが気持ち良くなれる表
現の仕方がようやく馴染んできて。ちょっと抽象的なんですけど、ノイズの音の塊み
たいなのが宇宙の彼方でゴォーッと鳴ってて、それが自分の手元に届く時には、すご
い微かな、アンビエントな音みたいなもので届くかもしれない、でもその実態はノイ
ズみたいな。ノイズっていっても、一つのやり方じゃなくて、いろんなやり方でノイ
ズってものを表現できるかなと。元は同じなんだけど、聞こえ方が違うだけで、物凄
いノイズに聞こえたり、アンビエントに聞こえたりってものを無理やりバンドでやろ
うと。

デン:もともと ダンス的な要素が強かったのが、どんどん 極端にノイズにいって、
「SCUM」で突き詰めて、今はそういう感じじゃなくなってきてる。聴いてる人のイ
メージとしても 抽象的な感じがあるみたいで、前は ビートに合わせて動いてたのが、
最近は集中して見るって感じになってきてますね。

―――今回の作品でもミックスの段階で音が歪んで、最初に録音された音と違う音の
ようなものが生まれてる部分もあると思うんですが。

カワグチ:やっぱりライヴと音源を同じようにしたいあまりに、そうなってしまうっ
ていうのかな。自分たちで録り終えたばかりの音を家で聴いても、やっぱりなんか違
う、物足りないみたいなのがあって。“こういうことを言いたいのには足りない”っ
ていうか。

―――ある意味、作り上げたものを崩すような作業にも近いんじゃないですか?

カワグチ:確かに崩すんだけど、その最初の完成品のレベルが低いもんだったら崩し
ても、そんなに差はないと思うし。一回、ちゃんとしたものを作って、それをどうす
ると自分が一番気持ち良くなれるかっていう。

デン:僕の知り合いが、全然こういう音楽聴かないんだけど、「何回も聴いてるとカ
ーテンの向こうにけっこうポップなところがある」って言ってて。何回も聴いてるう
ちに、その向こうにやっと見えてくるものがあるみたいな。

スズキ:もともと僕が入る前のバクテリアのアルバムを聴くとポップな面がけっこう
あるんですよね。そういうとこも嫌いじゃないし、どんどん採り入れていきたいなっ
て思ってるんですけど。

―――5曲目の静かで綺麗な部分などに関しては、どんな意図なんですか?

カワグチ:さっき言ったみたいに、ノイズというものの表現の仕方の違いで、そうい
うアンビエントなアコースティックな部分にもノイズの要素を表していきたいという
か、本質的にはノイズそのものなんだって部分を出していきたいんですよね。

―――そのノイズというのは精神的なものだったりするんですか?

カワグチ:まぁ観念的なものになってしまうのかもしれない。単純にラウドなものや
ハウリングだけがノイズではないし。ドローンとか音響派みたいな人たちもいるじゃ
ないですか。そういったのもひっくるめてバンドでやりたいと思ってるんですよね。


TEXT / Hiroyuki KAWAKAMI

from INDIES ISSUE VOL.22. AUG/SEP.2005