extra II
INTERVIEW


SCUM (2003)

1987年 から活動を継続する バクテリア。 80's ニューウェイブ の血を 受け継ぎつつ、
ノイズ、 テクノ を飲み込んだ ヘヴィ・ジャンク で ゴシック・ハードコア な世界観は、
非常にユニークで嬉しい存在だ。 Z.0.Aの森川氏のレーベルよりリリースされる新作は、
殺傷力に満ちた音塊が渾然一体となったカオス・グルーヴを展開。ダンス衝動と脳細胞
を死滅させる快感が同時に楽しめる作品。


カワグチ:最初は一人でバクテリアをやり始めたんだけど、もともとはメルツバウとか
非常階段 とかが好きで、 いろんな音楽のノイズっぽい要素を どんどん取り込んでいく
ようなものをやってた。 踊れるものも含めてね。 だから、 打ち込みのリズムとパワー
ノイズがドッキングしたみたいなのが一番最初。そこから色々メンバーが流動していく
中で、少し音楽的になったり、ならなかったり。ゴッド・フレッシュとかミニストリー
とかも 出てきたけど、 それ以前から そういった要素 の モノを聴いてて、 それを合体
させたっていうのかな? バンド編成で 活発にライブを やり始めたのが 92 〜 93 年で、
その頃はブンブンサテライツとかとよくやってた。

―――トヨキ君にとって、ノイズとテクノそれぞれの魅力的な部分は?

カワグチ:気持ちよくなれること。だから自分がやる時も当然、気持ち良くなれる音を
追求してる。ノイズは魂を込めやすいし。たぶんそういうのに興味のない人には、ただ
のつまらないノイズ に思われるかもしれないけど、 ノイズ の中から演奏者の気持ちを
聴き取れる人は 聴き取れるだろうし、 俺は聴き取ったし。 テクノも 80 年代後半から
90年代に入ってから、クラブに岩崎君とも遊びに行ったりして(笑)、 体感する気持ち
良さがあったし、それを自分でも作り出したい。それは両極端かもしれないけど、両方
とも単純に何も考えずに気持ち良くなれる音だと思ってる。そこが魅力的なのかな?

―――で、段々とバンド・サウンドの比重が大きくなっていくわけですが。

カワグチ:"とりあえず4つ打ちかブレイクビーツを入れていれば、後は何やっても良い"
みたいな部分に飽きたのかな。例えばスクエア・プッシャーとか、あとドラムンベース
とか、複雑なリズムのものが出てきたりして、「あ、色々やっていいんだ」って思って。
それで変拍子を入れてみたり、ハードコア的な要素が入ったり。単純に自分のやろうと
してるボキャブラリーが増えたってのもあるかもしれない。

オオコウチ:昔に比べたらテクノ的要素はどんどんなくなってってるよね。

―――はい。で、今はどんな音をやりたいと?

カワグチ:だからそういう部分で気持ちが入り込める・・・ドラッグ・ミュージック
って言っていいのかな?要は曲そのものがドラッグなっていうものを作り出したい。

―――ループで気持ち良くさせて、かつノイズで脳をシャッフルするような?

カワグチ:そうそう。だからA→B→Cといくんじゃなくて、A→A'→A''があって、
Bがあるみたいな、そういうしつこい作り方だよね。ドラッグ・ミュージックです!

―――何か、“ジャンクはまだ生き残ってるぜ!”みたいな主張も感じるんですけど。

オオコウチ:ミクスチャー みたいな掛け合わせの音楽 っていうよりは、 このグチャ
グチャ感はジャンクだよね。

カワグチ:うん、 元になるフレーズ自体は 別にジャンクじゃないんだけど、 表面に
出てきたものがジャンクな音かもしれない。まぁ、グチャグチャとなった音にしたい
というのはあるよね。キレイに録りたくないし。汚く録って、それをベース・アンプ
とマーシャルで鳴らしたい。細かいフレーズとか埋もれて聴き取れないところがある
かもしれないけど、渾然一体となった塊として、一つの曲・・・ドラッグを作りたい。
それが表現的には、昔ジャンクと言われた音に近いかもしれない。

―――音が詰まっているのが気持ちいいと。

カワグチ:うん。

オオコウチ:ギュウギュウだもんね(笑)。サンプリングとか打ち込みも入って。

―――ヴォーカルにエフェクトかけてるのはどんな狙いで?

カワグチ:基本的にヴォーカルも楽器の一部だという意識。だからギターにディスト
ーションかけるのと同じ感覚というか。 僕は 音楽で メッセージを伝えるのって嘘っ
ぱちのような気がしてて。音から何かを感じ取ったりすることはあるけど、あんまし
自分の中では 重要でない。 自分が 聴く時もメッセージ性は 無視してるし。 別にね、
戦争が どーのこーの とか、 そういうことで 社会が 変わる とか 思ってない からね。
従って、自分の作り出す音楽も、音で気持ちを感じようって意識でやってる。


TEXT / IWASAKI (BISCUIT)

from INDIES ISSUE VOL.9. JUNE/JULY .2003